雪の夜に

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「なぜ、来たのですか……」 思いとは裏腹な言葉が掠れた声とともにあなたへと向かう。 俯く私を、あなたは悲し気な()で見詰めているだろう。 向かい合ったまま身動きもせず、ただ舞い落ちる雪が様子を窺ってくる。 「────言葉には、してもらえないのだろうか」 静かに、とても静かに通るあなたの声に、私のさ迷う視線が一点を捉えた。 白く冷たい絨毯に、残したキズが私の影の中に浮かんでいる。 「君の声で、伝えてはくれないのか?」 困ったように、誘うように、私の心を見透かしたあなたの目が恐ろしい。 「伝えてはいけないの。願ってはいけないの」 「では、僕が願うよ」 「……触れる事も叶わないのに」 「僕は、願う」 あなたの強い瞳が胸を焦がしてしまう。 込み上げてくる思いを吐き出してしまえば(らく)になるだろう。 「僕は、君に触れたい」 ゆっくりと窺うように伸ばされる手に、私はすがり付きたくて呼吸を忘れた。 「あなたを失いたくない……!」 そう言葉にしてしまうと、伸ばされた手は頬に触れずに(くう)に浮く。
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