728人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
風が吹くと、まだ少しひんやりとする三月の始め。桜の蕾はまだ膨らんでもいない。
この時期にしては穏やかな日差しの中、先輩たちが卒業式を終えて学校を出ていく。
「これでお役御免だね」
「要くん、またね」
俺の彼女役?を一年間務めてくれた、一宮遥先輩と、朝倉遼子先輩が、花束を抱えながら、清々しい笑顔を残して、俺の目の前を去って行った。
やっと、解放された。
それが、今の俺の正直な気持ち。
柊翔が卒業間際に、当時、俺がバイトしてたステーキハウスの娘さんだった境先輩に、俺たちのことをバラすというような脅迫めいたことを言われたらしい。
その時から、一宮先輩と朝倉先輩が俺の彼女、というのを演じてきた。
最初のコメントを投稿しよう!