秘密

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秘密

「おい鈴木、なんで言っちゃうの?」 「え?」 「俺がお前と呑んだ時に課長の批判をした事、社内に広めただろ?」 「ああ、その事か」 「ふざけんなよ。信頼してたのによ!」 「実は、ここに勤める前、俺は証券マンだったんだ」 「それがどうしたんだよ」 「証券マンとして休む暇なく遮二無二働いている内に本来の自分を見失ってしまい、ついに俺はインサイダー取り引き癖が付いてしまったんだ」 「インサイダー取り引き癖?」 「ああ。周りに言っちゃいけない秘密をついバラしてしまう証券マン特有の症状なんだよ」 「‥‥‥ん?それただのゴシップ好きじゃないの?なんかインテリっぽい言い回しにしてるけど」 「このインサイダー取り引きフェチズムがなかなか抜け出せないまま年輪を重ねてしまった」 「この数秒で言い回しを更にインテリっぽくしたな。それ噂好きの女子校生と同じだからな。年輪とかで誤魔化すな」 「それは随分な侮辱だな」 「何で?」 「インサイダー取引癖は、列記とした病だぞ」 「そうだったのか。ちょっと言いすぎた。すまん」 「この病理の深刻さは、今週の週刊大衆に載ってる」 「やっぱただのゴシップ好きじゃねーか。心配した時間返せ」 「とりあえずお詫びとして、お前ん家にマカロンを贈るよ」 「今謝れよ。本人ここにいるんだから。この先の菓子折りの流れは、どうでも良いんだよ。そんでマカロン贈るってお歳暮じゃん。宅配で済まそうとするな。自ら舵を取れ」 「舵を取るって何?」 「お前、自分が例える割りに言葉の綾とか分かんないのか」 「舵を取るって船の事だから。ああ、クルーザー贈れって事?」 「そんな訳ねーだろ。そもそもクルーザーなんて贈れる訳ねーだろ」 「まあお前、陸地に住んでるもんな」 「水上コテージなら良いって事じゃねんだわ。クルーザーなんて持って無いだろって事だよ」 「いや持ってるよ」 「え?持ってんの?」 「5台だけ。まあ親から譲り受けた物だけどな」 「‥‥‥へえ」 「そうだよなあ。陸地にクルーザーは迷惑だよなあ」 「まあ陸地で使える物が良いよな。どっちかっつうと」 「じゃあホバークラフトとか」 「あー。いや。そのー、陸地のみのそのー。まあベンツ的な」 「ああ、自動車か」 「まあな」 「それなら乗ってないマーチ贈るよ」 「マーチ!!」 完
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