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「……解りました。死神が世界のバランスを保つ為に、命の調整をしている事は理解していただけたと思いますが、有坂様の様に予定にない死を選ばれる方もいらっしゃいます。しかし、それとは別に予定にない誕生もあるのでございます」
「予定にない誕生?」
「そうでございます。神といっても、万能ではございません。稀なケースではございますが、神自身が世界のバランスを崩すしてしまう事があるのです。その為、私達死神が死の候補者から繰り上げて、バランスを保つのですが、予定してない事態ですので、候補者複数名をオーディションにかけて決めるのです」
「だから、命のオーディション?」
「左様でございます。先に言っておきますが、有坂様は、今回の候補者には名前がありませんので悪しからず」
先に念を押されてしまったので、僕が代わりになる事は出来ない様だ。
それにしても、命のオーディション――とは、一体どんな基準で決めるのだろうか?
今後の参考にも、僕は選考基準に興味が湧いた。
「久慈さん、どんな基準で決めるのですか?」
「そうですね……。これまでの善行と悪行も選考の対象になりますが、やはり生きる気持ちがどれだけあるのか、これも大きな基準になります。生きる気力のない方を生かしても、それは他の命に対する冒涜ですから……」
冒涜――。
久慈さんからすれば、僕の様な自殺願望を持つ人間は冒涜者――、命のありがたみを理解していない愚か者――。
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