44人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
【舞踏会】
煌びやかに浮き立つ町の灯。連なる馬車は真っ直ぐに、小高い丘の上に建つ城へと向かっている。
今夜は国王主催の舞踏会が行われる。15歳以上の貴族が集められていた。
城へ向かう馬車の一つ、華々しさとは逆行した地味な様子のそれには一人の少女が乗っていた。
痛んで纏まりのない赤毛をどうにか形にし、頬にはそばかすが見える。15歳にしては痩せていて顔色も良いとは言えず、とても貴族の娘とは思えなかった。
「すまないな、リコリス。本当はもっと大きな馬車で乗り付けるはずだったんだが」
「いいのです、お父様。お姉様達も、私と一緒にはいたくないのでしょう」
申し訳なさそうな父に遠慮ぎみな笑みを見せた彼女は、心の底では舞踏会への出席自体を辞退できなかったのか、ずっと思っていた。
やがて馬車は城の前に到着した。父のエスコートで馬車を降りた少女リコリスを見て、周囲は驚きと蔑みの目を向ける。
痩せた体、し慣れない化粧、ブカブカの古びたドレス。こんなものしか、リコリスは持ち合わせていない。
「場違いですわね」
「恥ずかしい。良く来れましたこと」
「いやねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!