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見れば遠くに姉達の姿があった。綺麗な金の髪に、華やかなドレス。二人を見ると、直ぐにでも消えてしまいたくなる。
けれど舞踏会が終わるまでは帰れない。試しに衛兵に聞いてみるも、ダメだった。
目立たないように、見つからないように。必死になっていたリコリスは、不意にしたファンファーレに顔を上げる。
見れば壮年の男性が大階段を降りてくる。立派な立ち姿に、この人がこの国の王なのだと疑う余地がない。
そしてその後ろには、二人の王子が付き従っていた。
一人は黒髪に黒い瞳をした、少し気難しそうな人。
もう一人は長い金髪に青い瞳で、キラキラと光を集めたかのような華やかな人。
どちらも美しい顔立ちをしていて、一瞬で引き込まれるようだ。
「今夜の舞踏会は、王子様達の妃選びも兼ねているんですって」
ドレス姿の女性達が色めき立ち、小声でそんな事を言う。
だが、リコリスにはあまり関係の無いこと。むしろ、一目見られただけで十分な人だ。
始まりの挨拶と、乾杯。それらを形だけ取り繕ったリコリスはそっと会場を抜け、人気の無い庭園へと足を向けていた。
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