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「あの、私みたいな娘がいるよりは、お一人の方がいいと思って……」
「誰がそう言った」
「それは…」
言葉が出なかった。
男は視線でベンチに座るように促してくる。手は相変わらず掴まれたままだ。
リコリスはおどおどしながら、出来るだけベンチの端に座った。にも関わらず、男はわざわざ隣りに座り直した。
「パーティーは苦手か?」
不意に尋ねられ、俯き加減に頷いた。正直、自分には似合わない世界だ。縁遠いものしか感じない。
「私も苦手だ。どうも馴染めない。だからここに逃げてくるんだ」
「逃げてくる?」
「静かだからな。できるならこうした場所で読書でもしていたいものだ」
確かにこの庭は静かで、穏やかで、優しい雰囲気がする。居心地がいい。
「こういう場は初めてか?」
「はい、先日15になったばかりです」
「15?」
年齢を聞いて、男は途端に訝しい顔をする。綺麗な顔に僅かに皺が寄るだけで厳しさを感じてしまう。
男は観察する様にリコリスを見る。髪に触れ、手に触れて。とても居心地が悪い。醜い事を一つずつ指摘されている気分だ。
「年齢のわりに小さく痩せて顔色も悪い。髪の手入れもされていない」
「あ…」
「どんな生活を送っているんだ」
そう言われると苦しくなる。まるで、責められている様に感じる。
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