【夜の庭園】

4/11
前へ
/20ページ
次へ
「あの、私みたいな娘がいるよりは、お一人の方がいいと思って……」 「誰がそう言った」 「それは…」  言葉が出なかった。  男は視線でベンチに座るように促してくる。手は相変わらず掴まれたままだ。  リコリスはおどおどしながら、出来るだけベンチの端に座った。にも関わらず、男はわざわざ隣りに座り直した。 「パーティーは苦手か?」  不意に尋ねられ、俯き加減に頷いた。正直、自分には似合わない世界だ。縁遠いものしか感じない。 「私も苦手だ。どうも馴染めない。だからここに逃げてくるんだ」 「逃げてくる?」 「静かだからな。できるならこうした場所で読書でもしていたいものだ」  確かにこの庭は静かで、穏やかで、優しい雰囲気がする。居心地がいい。 「こういう場は初めてか?」 「はい、先日15になったばかりです」 「15?」  年齢を聞いて、男は途端に訝しい顔をする。綺麗な顔に僅かに皺が寄るだけで厳しさを感じてしまう。  男は観察する様にリコリスを見る。髪に触れ、手に触れて。とても居心地が悪い。醜い事を一つずつ指摘されている気分だ。 「年齢のわりに小さく痩せて顔色も悪い。髪の手入れもされていない」 「あ…」 「どんな生活を送っているんだ」  そう言われると苦しくなる。まるで、責められている様に感じる。     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加