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Crow
昨夜、立衛とセックスした時のことだ。
僕たちは長い間じゃれあっていて、いざ立衛の中に侵入した時には、かなりベッドの端っこにいた。それでも、おたがいの身体を中央に引き戻すことすら面倒なくらい行為に没頭していた僕たちは、感極まった瞬間、ベッドから墜落した。
放出と痙攣、伸縮と快感の余韻、気だるさ。それらが一気に押し寄せる、あの最高の瞬間に、僕たちは思いがけない衝撃と痛みに襲われ、硬く冷たい床の上で、ぴったりと抱きしめあったまま、ケラケラと笑い合った。
「最低、」
僕がそうつぶやくと、立衛が僕の頬を突いてくる。
「お前こそ、最低。『落ちる、落ちる』って何度も言ったじゃん、俺」
「違う意味かと思った」
「やっぱ最低」
それから僕たちはベッドの上にのそのそと這い上がって、身体を絡ませたまま何度もキスをして、眠った。
しっとりと汗ばんで、汚れた身体を拭きもしないで。
目が覚めたら九時をとうに過ぎていて、僕たちは空腹だった。冷蔵庫は空っぽで、仕方がないから牛乳だけ飲んで、立衛が「本屋に行きたい」と言ったから、街へと繰り出した。
立衛は昨日と同じ、ネイビーのコットンシャツ姿で、僕は同じくネイビーのボーダーシャツに、白のパーカーを羽織る。お揃いの細身のデニムは同じ店で買ったものだ。
地下鉄に乗って、天神まで向かう。ビルに入った大型書店で、立衛は文庫本のコーナーで小説を物色している。立衛は本の虫だ。僕は雑誌コーナーで時間を潰す。小一時間ほどして、ずっしりと重い紙袋を提げた立衛が僕を迎えに来る。
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