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呆然と佇む僕に、ドン・サファイアの右腕である弁護士の佐条さんが、彼の病気のことを教えてくれたのだ。
「『どうせ残り少ない人生だから、惚れたやつと腹上死するまでやりまくりたい』だそうです」
「はあ、」
「要するに、あなたにベタ惚れなんですよ」
そう言って、佐条さんは苦笑した。
「……あなたには本当に申し訳ないことをしてしまいましたが、彼が言うとおり、もう余命はわずかなのです。ですから、その時まではどうか」
「僕だって彼が好きです。……だから、最期まで一緒にいます」
僕の言葉に、佐条さんは目を丸くする。僕は笑って、言った。
「そりゃ、最初があれだし、ドン・サファイアが怖くないといったら嘘になるけど、彼が僕のことを全身全霊で愛してくれるから、僕もその気持ちに応えたい」
「よろしくお願いします」
佐条さんは眼鏡のブリッジを押さえながら短くそう言って、部屋を後にした。
ひとり残された部屋の、広すぎるベッドの上で、僕は泣いた。こんなに好きにさせておいて、身も心も奪い去っておいて、そりゃないだろと。
「……もし無事に帰ってきたら、本当に腹上死させるくらい、やってやってやりまくってやるからな」
僕はそう心に決めて、淋しくもの悲しい夜を過ごした。
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