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「違うのよさやか、これは吊り橋効果よ」
「何言ってんのアンタ」
その日の昼休み、やっぱり学校の食堂にて。
私は開口一番、さやかに言い訳をする。
「今朝、奴に一瞬たりともときめいてしまったのは『吊り橋効果』であり錯覚であると」
私は豚キムチ丼を頬ばりながら、さやかに力説する。
「あんた『吊り橋効果』の意味わかってる?」
さやかはトルコライスをスプーンですくいながら返事をする。
ちなみにトルコライスとは何ぞや、と思ったそこのあなたはスマホで画像検索をしてみるといい。飯テロも良いところだから。
「もちろんわかってるよ!」
「説明してみなよ」
「『たわいもない会話や行動を、なぜか吊り橋を渡っているかのように刺激的に感じる錯覚』っていう意味でしょ?」
「……奇跡的な解釈だね」
さやかが呆れを通り越して、感心したような表情を浮かべる。
「違うの?」
「全っ然、違う。
正しくは、
『吊り橋の上のように、恐怖や不安を強く感じる場所で出会った人には、恋愛感情を抱きやすくなる』っていう意味よ。
本当かどうかは知らないけど、心理学の実験でそういう結果が出たらしい」
「えぇ!全然違うじゃん」
「別に驚くことでもなんでもないよ。愛子に常識がなさすぎるのよ」
「……18年間、ずっと勘違いして生きてきた」
「それで、カント様に惚れたって?」
「だから違う!ありえない。あれは錯覚なのよ!」
「何があったのか報告をしなさい」
さやかがスプーンを持つ手を止めて、聞く姿勢をつくる。
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