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本命だもん
私はバレンタインデーが嫌いだ。
それはまあまあ良い男と付き合っているから。彼氏の美樹とは中一の頃から五年も付き合っている。顔が良く、勉強もできるが、面倒臭がりの性格もあって、浮気はただの一度もされたことがない。
私も誰かに遠慮するのが嫌いな性格だから、学校では美樹と付き合っていることはクラスの皆に公言している。
だけどこの時期は困る。美樹は長身で目立つタイプだから、駅前に一人で立っているだけで、私のことを知らない、他所の学校の女の子に平気で好意を寄せられる。
ほらね。あの眼鏡の地味、地味、地味子さんはどこの誰かしら。美樹がどこかの学校の女生徒さまに、バレンタインチョコレートをもらっていた。
「あ、あの。もしよかったら食べて下さい」
地味子さんは必死に美樹に頭を下げると、お友達と一緒に駅前の道を駆けて行った。
私は美樹の横に立つと、一緒に学校を出なかったことをからかった。
「生徒会の仕事があるだけですぐにこれね」
「欲しいんだったらやるよ」
美樹は真っ赤な包装紙でラッピングされたチョコレート缶を私に差し出してきた。赤は情熱の色。呆気なくチョコレートを押し付けられても張り合いがない。
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