本命だもん

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「せめてお返しぐらいすれば?」 「返事が無いは、付き合う気がないってことだろ?」  美樹はぶっきらぼうに言うと、そのまま一人で歩き始めた。私は真っ赤な包装紙のチョコレートを通学鞄に差し込むと、百円ほどの安いチョコレートを取り出した。 「はいこれ私からのチョコレート」 「コンビニのやつ?」 「板チョコにココアパウダーをふっただけの手作りより断然美味しいでしょ?」 「まぁな」  美樹はありがとうも言わずにチョコレートの箱を開けた。子供っぽいやつ。私は微笑みながら美樹の腕に抱きついた。 「一粒ちょうだい」  私は美樹にもらったダークビターのチョコレートを頬張ると二人並んで歩き始めた。  美樹と別れて家に帰ってきた。  台所から見える裏庭に、お母さんの植えたラッパ水仙の黄色い花が咲いていた。  私は鞄を椅子に置くと、大きめのマグカップにコーヒーを作った。無糖のブラックコーヒーを飲むと、自然と甘いものが食べたくなる。私は美樹にもらった真っ赤なラッピングを思い出すと鞄の奥から取り出した。  私はチョコレートを机のうえに置くと、目をつむり手を合わせた。 「バレンタイデーの神様、どうぞ中身を既製品にしておいてください」     
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