本命だもん

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 当然だ。もし中身が愛の詰まった手作りチョコレートだったら、いくら相手が名も無き地味子さんでも申し訳がない。  私は祈り終わると丁寧にチョコレートの包装紙をはがした。ポロリ……。  一通の手紙が床のうえに落ちた。私はその手紙を拾いあげる。読まなくても内容は想像できた。バレンタインチョコレートに添えられた手紙だ。ラブレターに間違いない。地味子さんの愛の告白、読むなと言われても読みたくなる。私は真っ白い紙に書かれた手紙を開いてみた。 『突然の手紙申し訳ありません。私は南が丘女子に通う山岸愛菜と言うものです。あなたのことをずっと遠くから眺めていました。迷惑ではなければ私と友達になって下さい。mail ×××@×××××………』  好きだとはあえて言わない。なんて可愛らいしい文章なのかしら。地味子さんは私と同じぐらいの年に見えたけど、こっちが汚れた人間に思えてくる。私はスチール缶で出来たお洒落なチョコレートの蓋を開けてみた。 「八十点……」  プロ級とは言えないけれど、背伸びして作ったことが解る可愛らしい一粒チョコが沢山並んでいた。私はハート型の苺ジャムの乗っかったチョコレートを手に取ると味のほどを確かめた。 「美味しい……」  中学生の頃、美樹にマズイって言われた。私の作った湯煎チョコレートとは段違いだ。     
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