本命だもん

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 さすがにお返しをしないのは悪い気がしてきた。私はレンジのうえに置かれた、お菓子のレシピ本を手に取った。クッキーでも焼いてみようかな。私は首を降ると即座にレシピ本をもとにあった場所に戻した。そんなことしても嫌味にしかならない……。  じゃぁお返しはなにがいいかしら? 美樹を一日貸してあげるのはどう? それもやっぱり、ただの嫌味にしかならない。じゃぁ美樹の案を採用して無視をするのは? でも地味子さんの手紙が、変に可愛いのが癪にさわる……。 「そうだ……」  私は地味子さんのラブレターを破ると、手作りチョコレートのうえに投げ捨てた。  次の日の放課後、一人で南が丘女子高校の正門までやってきた。手紙に校名が書いてあったので場所を見つけるのに苦労はなかった。 「ねぇ、あなた、ちょっといい?」  私は校庭を歩いてきた地味子さんに声を掛けた。地味子さんは近くで見ると、眼鏡が似合う、思いのほか清楚なお嬢さんだった。私はすかさず鞄のなかから、真っ赤な包みに入ったチョコレート缶を取り出した。 「これ、あなたに返すわ?」 「え、どう言う意味ですか?」 「私、美樹の彼女、こういうの迷惑なんだけど」 「え、あ、その……。すみません……」 「すみませんじゃないわよ。美樹には二度と近づかないで」  小柄な地味子さんは、怒鳴られると小さくなって黙り込んでしまった。 「ふん!」  私はそのまま地味子さんを無視すると、きびすを返して駅に向かった。     
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