桜の木の下で。

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 満開に咲き誇る桜。  その木の下に二人の男女が立っている。 「──貴方が『響』(ひびき)ですね」  桜の舞い散る中で、目の前に立つ女性にそう言われた。  『響』と呼ばれた彼は「はい」と答える。 「私はエンジニアの巳右(みう)です。本日より、貴方のメンテナンスをすることになりました」  女性──巳右は淡々と言う。 「メンテナンス。君が僕の身体を整備するということですか」  『響』は確認・認識の為に言葉を繰り返した。 「はい。これから定期的に行うことになっています」  即座にはっきりと答える巳右。 「了解しました」  『響』がそう応じると、巳右は手にしていた鞄を広げ、道具を取り出しメンテナンスの準備に入った。  ──『響』は、介護用アンドロイドだ。しかし現在は介護用として機能していない。 「それでは、始めます」  そう言って巳右は何の躊躇いも無く『響』の服に手を掛ける。シャツのボタンを全て外して開けさせ、検分を開始した。外傷の有無、間接部可動域の異常、感覚器の異常、言語認識の異常……必要項目の全てを確認した。外部も内部も全て。
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