桜の木の下で。

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 二週間後。  巳右は予定通り、やって来た。 「では、始めます」  事務的にそう言って、巳右はメンテナンスに取りかかった。 「君は誤解している」  『響』は作業をする彼女に言う。  巳右がその手を止めて『響』を見上げる。 「何のことですか?」  首を傾げる巳右。 「僕は君のお姉さんを殺してはいない」 「…………」  巳右はきょとんとした顔で『響』を見返した。 「……昨日の、私が言ったことですか」 「『貴方が殺した』というのは誤りだ」 「……誤りなんかじゃないですよ」  作業から手を離して巳右は言う。 「そうですね、言い直してみましょうか。『貴方のせいで姉は死んだ』んです」  だから貴方が殺したのと変わらないです。と、巳右は『響』を真正面から見返した。『響』はその顔を真っ向から受け止めたが、その表情に、感情の表れは無かった。  巳右の気持ちが読み取れない。  表情、声、態度。その、いずれからも、巳右が今抱いている感情が読み取れない。  暫く観察していると、すっ、と巳右が手を伸ばしてきた。 「姉は……貴方に恋をしたから、死んでしまったんです」  頬に巳右の手の平が触れる。そこから彼女の体温を感知した。しかし、そこからも彼女の気持ちは読み取れなかった。  そうして『響』に触れながら、彼女は言った。 「実は私──全てを知っているんです」
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