Topazos

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 体育館から漏れ聞こえてくる、ほんの少し湿っぽい声のあおげば尊し。  在校生代表だけが体育館の中で、その他大勢はグラウンドで待機なんてずるい。  そんな風に不貞腐れながら、ドキドキと高鳴っていく胸が苦しくて、学ランの詰襟の辺りを落ち着かなく触る。  学ランのポケットには、司くんにもらった御守りと、初詣の時にこっそり買ったまま渡せなかった御守りの2つが入っている。  気持ちを伝えるか伝えないか──迷ったままで今日を迎えてしまった。  伝えたとして、叶うかどうかは分からない。最後の最後で嫌われたり気持ち悪がられたりしたら、立ち直れない。だけど、伝えてスッキリしたいような気もしているし、何も伝えないで2年後に自分の気持ちを確かめる手もある。  ──待ってると約束してくれたのだから、2年かけて自分の気持ちを整理したっていいのだ。  ただただ兄のように慕っている気持ちを恋と勘違いしているのかもしれないし、自分にだけ特別な顔をしてくれるのが嬉しかったり優越感を覚えているだけかもしれない。  男同士なんだから。ホントはこんなのおかしいし気持ち悪いんだから。冷静になって考えた方がいいに決まってる。  ポケットに突っ込んである2つの御守りをギュッと握って、そろりそろりと息を吐き出す。  聞こえてくる曲が、蛍の光に変わった。  もうすぐ卒業式が終わる。  そっと視線を落としたら、 (……なんで……)  こんな時に、とそっと笑ったつもりが失敗した。  唇の端が、ぴくりとひきつって歪む。  落とした視線の先で、ボールがポツンと淋しそうに溝に転がったまま土埃を被って茶色くなっていた。  まるで気持ちを伝えるのを躊躇う自分みたいなそれに、胸が痛くて苦しくなる。  そっと溝に近づいて、優しく拾い上げた。  ──蛍の光が終わる。 「……ぉ? どぉした、コータ。ボールなんか持って」 「ちょっと……」 「コータ?」  もう終わんよ? と首を傾げる友人の声に、うん、と曖昧に頷きながら思い浮かんだのは、司くんが初めてボール拾いの訳を教えてくれた日のことだ。 『置いてかれてるみたいじゃない?』  淋しそうに笑う顔。照れて真っ赤になった耳。  ──こんなに好きなのに、2年も待って確かめる必要ある?
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