Topazos

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 いつもの優しい声とは違う、不貞腐れたような声が返ってきて困惑するしかない。 「司くん……?」 「どうせ! オレなんか頼りにならないと思ってんだろ」 「……ぇ? 何言って……?」 「なんかあるならちゃんと言ってよ。……そりゃオレなんて別に頭いい訳でもないし、ハブられたりしてるし。頼りないとこしか見せてないけどさ。……大事な後輩の話くらい、ちゃんと聞けるよ」 「司くん……」  むすっとした唇。なのに見たことがないほどに哀しそうで悔しそうに沈む瞳。  ──あぁだから。そんな顔されたら好きになるってば。  なんでそんなに無防備なの。おあつらえ向きに誰もいない体育倉庫でそんな顔。安いAVじゃないんだから。  悶々と自分自身と闘いながら、半泣きの表情で俯く司くんを見つめる。  だって男同士なんだよ。ソンナコトが起きるなんて思わないから無防備でいられるんじゃないか。男同士なんだから、ソンナコト起きるはずがないんだよ。  いつもの冷静な声に諌められながら、胸に溜まった息を少しずつ吐き出す。 「…………頼りにならないとか、思ってないよ」 「……」 「……ハブられてる訳ないじゃん」  司くんが知らないだけだ。オレだって最初の頃は鬱陶しがられてるのかと思ってたけど、そうじゃないんだって最近気が付いた。  先輩達は、司くんがボールを拾いに行く背中を、手伝った方がいいのか手伝わない方がいいのかとオロオロそわそわしながら見つめてるし。後輩達はみんな、そんな背中を眩しく仰ぎ見ながら、だけど先輩が誰一人動かない中では行動に出られないと、もどかしがっている。司くんが纏う1人でも平気、みたいな雰囲気を感じて手をこまねいているだけだ。  率先して手伝うオレが、むしろみんなからやっかまれているくらいなのに。 「……、……司くん。高校、どこ行くの?」 「っへ?」 「オレも一緒のとこいく」 「……何言ってんの。ちゃんと決めなよ。自分の進路でしょ」 「いいじゃん。オレの進路なんだから、オレが行きたいとこにいく」 「だったら……」 「司くんのいるとこに行きたい」  精一杯だった。  男同士──ソンナコトが起きないはずの関係で、ギリギリおかしくない着地点はたぶんここと決めつけて放った。  呆気にとられてパチパチ瞬きする司くんが、毒気を抜かれたみたいにいつもの優しい顔に戻って、やれやれと笑う。
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