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「……そっか。ならよかった」
勢い任せのどうでもいいオレの話を驚きに目を見開きながら聞いていた司くんが、ゆったりと笑って頷いてくれる。
よくない。ほんとは全然よくない。
こんな生殺しみたいな時間、ほんとは苦しくて苦しくて仕方ないのに。
なのに会いたくてどうしようもなくて、結局ここに来るしかない──逃げ出しようのない無限ループにハマったみたいで、苦しさが無限に広がってくみたいだ。
「…………つかさくん」
「ん?」
「………………」
「……どした?」
「…………もうすぐ、お正月だね」
「? うん」
「初詣一緒に行こうよ。学業の神様とか調べて」
「……うん、そだね。いいかも」
苦し紛れの提案をあっさり受け入れられることにさえ苦い思いを噛み締めながら、ループから抜け出す方法を見つける努力は放棄していた。
*****
初詣の効果なのか、それを上回る司くんの努力か。
司くんは、無事に第一志望の高校に受かった。
「……おめでとう、司くん」
「ん。ありがと」
はにかむ顔はホッとしたように柔らかく緩んでいる。
「……ぁ、そうだ」
「?」
良かったね、を繰り返すことしか出来ないオレに、司くんが何かを思い出したみたいな顔してゴソゴソ鞄を探って
「手、出してみ」
「手?」
キョトンとしながら言われるまま手のひらを差し出せば、はい、と軽い何かを手に載せられた。
「…………これ……」
「オレが使ったやつ。ちゃんと受かったし、縁起いいかなって」
「ぁ……あり、がと……」
「ヤだったら捨てて」
「捨てないよ!」
照れ臭そうに笑った司くんの台詞に被せるみたいに叫んで、受け取った御守を大事に握りしめる。
「捨てない。……2年後、司くんと同じ学校受かって、返しに行く」
「…………ん。待ってる」
真っ直ぐに目を見つめて、真っ直ぐ届けた言葉を。
噛み締めるみたいに頷いた司くんが、ふわ、と優しく微笑ってくれた。
「待ってるよ」
*****
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