どこにでもいる

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「私は彼らに箱は外の祠に保管してあると言いました。祠の外側から内側を覗く分には構わないと。 箱自体を見せてくれと頼まれたけれど、それは断ったんです。 祠の鍵を開けるのは呪いの箱を裏山に隠す日に、中の札を新しいものに変える時だけだし、鍵にもお札の効力があるから。 箱は鍵をかけた外の祠に保管してあったんだけれど、次の日、祠の中の箱が無くなっていたんだ。鍵は壊されていて、多分彼らは夜中に盗みに来たと思う。」 宮司さんは、そこで首を振った。 「…いや、盗むと言うより箱がどんなものか見たいだけだったのかも知れない。」 宮司さんがみんなの顔を1人ずつ見渡す。 「祠の奥に水晶の玉が3個置いてあった。お札の効力を強める為です。 その水晶が全て割れていたんだ。 箱を見に来た彼らがその水晶まで盗ろうとした訳ではなかった。水晶を持ち出そうとして手を滑らせて割れた感じではない。まるで、爆発したように粉々になっていた。鍵を開けた事によって、全ての効力が弱くなってしまったのかも知れない」 彼の声は小さくなってしまった。 だけど、誰もがその話を静かに聞き、再び話し出すのを待つ。 「あの呪いの箱の女の子たちは可哀想だ。毎日怒りや恨みが少しでも解けるように祈ってはいるんですよ。 でも、それでも、なかなか彼女らの恨みは晴れないし、私たちにとって、脅威しかない。村の血を引く者、あの地域で生まれた者を呪い殺してやろうと、その箱を見に来た連中を使って動き出したに違いない」
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