34人が本棚に入れています
本棚に追加
リュウキ
「みなさん。
これからの世界は、みなさんが創り上げていかねばなりません。
あの、富士山の噴火と、大地震から十年。
日本の人口はやっと7千万人を超えました。
ありのままの自分と他者を認め合い、
高めあい、そして、先人の分まで、大いに人生を楽しんでください」
ダンディな校長先生は、うっすらと涙を浮かべて
(背がまだ小さいぼくは、列の先頭。先生の顔もよく見える。ぼくには、泣いてるように見えた)
深く、最敬礼でおじぎをした。ぼくたちも、頭を下げた。
(最敬礼でおじぎって、頭が頭痛みたいな言い方だよね?)
ぼくの後ろで、ナナが、ふふ、と笑う。
ナナが、ぼくの耳に顔を寄せ、くすくすを忍ばせた転がる声で言った。
ふっと、鼻先を良い香りがただよう。
この香りさえ、他の人間には届いていないらしい。
ナナは、他の人には見えない。
(ねぇ、リュウキくん。
聞いてる?そういえば、
リュウキくん声低くなったね。声変わり?)
無論、ぼくは無視。
他の奴には見えてないナナに返事をすることが、
どんなに滑稽で奇怪に見えるかは、もう十分に知っている。
(あーあ。私も、大いに人生楽しめば良かったなー。ま、楽しかったけどね)
ナナは、ふいっと姿を消して、声だけで俺に語りかけた。
(リュウキくんもさ、人生楽しみなよ!
せっかく女の子みたいな綺麗な顔に生まれたんだから!)
(うるさい。人が気にしていることを!まだ、これから背が伸びるんだよ)
最初のコメントを投稿しよう!