ナナ

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ナナ

私は、机をガンっと蹴り飛ばした。 無言で、女子たちを睨み付けてやった。 「こっわー」 「家、ゴミ屋敷でしょ?母親の頭がおかしいと、子どももおかしい」 「それな」 ぶつぶつ言ってる女子を掻き分けて、女子トイレへと向かった、 ムカつく! 個室に入ってから、 声を出さないように、ボロボロ泣いた。 ムカつくムカつくムカつくムカつく! ひっ、と吸い込む息を、手で押さえた。 あんた達に、何が分かるのよ! お母さんは・・・ お母さんは、壊れてしまったのかな・・・ もう、5時間目のチャイムは鳴っていた。 私は便座から立ち上がった。 強く、真面目に生きるんだ。 そして、ちゃんと高校卒業して、ちゃんと奨学金で大学入って。 安定した、有名な、みんながうらやましがるような会社に入って。 きれいで清潔な家に住んで、きちんとした身なりをするんだ。 私は、お母さんみたいに、誰かに依存して生きない。 私は、クラスのあいつらみたいに、 他人を貶めることでしか、自分を保てないほど弱い人間じゃない。 私は、強い人間だ。 胸をはってトイレから出て、屈強な女戦士の足どりで、教室へと向かった。
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