ナナ

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家のドアを明けると、生ゴミの臭い。 散らばった靴の上に、学校指定の革靴を脱いで 廊下の真ん中に出来た、 かろうじて歩けるスペースを歩く。 しょぼいモーゼだ。 お母さんは、こたつに足をつっこんだまま眠っていた。 お酒のにおいと、大きないびき。 なるべく、キレイそうな場所を選んで制服をかけて 中学校のジャージに着替えた。 食卓テーブルに、わずかなすき間を作って 私は勉強を始めた。 私は、勉強が好きだ。 得意ではないけど好きだ。 特に、歴史。 暗記している時は、別の世界にいるような気持ちになる。 それに、過去のニュースの連続を見ていると 教科書に載ってるような人たちも 結構なヒサンな目にあっているんだなぁとしみじみ思う。 お父さんが、ある日突然消えて お母さんが変わってしまって 貧乏だわゴミ屋敷だわマイルドにいじめられるわと 結構、辛いこと多いなーなんて 思っていたけど(今でも思うけど) 歴史上の人物のヒサンさを見てると 目の前で家族殺されたり ものすごーく、じわじわと、いやーな殺され方したり 皇帝から犯罪者になったり した人たちが 頑張って 頑張って 頑張って 生き抜いて その血が私までリレーされてるのって ヒサンさと比例して感動する。 私は、平安時代の末期とか室町時代の末期とか そういう時代に妙な魅力を感じてしまう。 「なに、あんた。帰ってたの・・」 お母さんが、目を覚ました。
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