「不幸選手権」

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「多分・・違うと思う。 トキの姉さんって、桃子ちゃんだっけ? 6才で亡くなったんだよね?」 トキは、無言でまばたきをした。 「ぼくと一緒にいる人・・人っていうか、霊の人」 (光の人って言ってよ!) とナナからつっこみが入り 「光の人は、ナナっていう、高校生くらいの女の人だよ。 同じ、あの災害で亡くなったって本人が言ってるから、 多分そうなんだろうけど」 「ふーん。なんだ。違うのか」 「違うと思う・・・それより、霊の人、いや光の人とか言っちゃって 変に思わないの?」 ぼくは、初めてナナとあった頃のことを思い出していた。 このお姉さん、優しいよ、というぼくに、父さんは悲しい目で「そうか」と言い 親戚のおばさんたちは「やっぱり、こんなに小さいのにお母さん亡くしてショックなのねぇ」と、勝手に分析をしていた。 ぼくは、それ以来、ナナのことは言っていない。 トキにさえ。 「俺、やっぱり死んじゃった母ちゃんとか 父ちゃんとか、姉ちゃんとか、身体が見え無くなっただけだとか どっか違う場所で仕事してたり留学してるだけなのかなとか そういうこと、思うんだよ」 いつも、クールでかっこいいトキの声が なんだか弱っているように聞こえた。
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