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勾玉
トキのくびすじに、見覚えがあるような無いような、不思議な形のあざがあった。
「トキ。お前、首ひっかいたのか?やけどでもしたのか?いじめられた?」
トキは、首筋に手をやると、ああ、というようにニヤリとした。
「お前、今まで気づかなかった?小さいときからあるんだよ。急に濃くなったり、薄くなったりしてたんだけど、そういや最近濃いな」
「大丈夫か?なんか、皮膚科みたいなとこ行った方が良くないか?・・変わった形のあざだし」
トキのあざは、丸にしっぽが生えたような、おたまじゃくしのような形をしていた。
「そうなんだよ。まぁ、小さいときからあるし、悪性のもんじゃないだろ。病院行くようなもんじゃないよ。あ、それならリュウキ、お前には見えないだろうけど、お前も昔から背中にあざがあるぞ」
「そうなのか?」
「おう。お前のあざは、歴史の資料集に出てきた勾玉みたいな形してるぞ。家に帰ったら、鏡で見てみろよ。ん?おれのあざと、少し形似てるかもな。思春期に出がちな模様とか?」
トキはメガネを上げながら、その男前の笑顔で俺に言ったが、俺はの方はメガネじゃなく、心臓がぎゅっと縮みあがった。
ナナとトキが言った『勾玉』という言葉に、
油汗がだらだらと出てきた。
「俺の、背中に、勾玉のあざ・・・」
俺は、訳の分からない恐怖に襲われた。
「トキ。お前のあざも、同じような形してんぞ」
その声を出すのに、ぼくはかなり苦労した。
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