バレンタイン・ラプソディ

13/15
前へ
/15ページ
次へ
「なん、で…?」 思わず声が(かす)れそうになる。 「オレさ、今日貰った数…だいたい覚えてたんだ。記憶では確か十五個だったハズなんだ」 「………」 「これ、お前がくれたんじゃないの?」 その声にゆっくりと振り返ると。 植草の手には、さっき私が置いた小さな包みが乗せられていた。 「………」 「………」 思わず視線が絡み合う。 (何か…。早く、何か言わないと…) 植草に変に思われない内に。 「ば…バレちゃったか。それ、頼まれてた分ね。でも、良かったね。まさか…それが、決め手になるなんて…思わなかったけど…」 明るく笑ったつもりが、徐々に声が小さくなっていってしまう。 (あああ馬鹿ーーーっ!これじゃ思いきり不自然じゃんっ!!) 自分に自分でツッコミを入れるも、もう遅い。 「高山…」 植草が微妙な顔をした。 そんな表情を見ていられなくて、 「とにかく…そういうこと、だから…」 それだけ言うと。 今度こそ笑顔で「じゃあ、帰るね」と向きを変えると、教室の扉へと向かった。 「サンキュ、高山。お前のお(かげ)で決意が固まったよ」 後ろで植草の呟く声が聞こえる。 「告白する勇気、貰ったよ」 珍しく、真面目な声。 「…それなら、…良かった」 植草に背を向け、扉に手を掛けたまま私も呟く。 本当は複雑だった。 これから植草が誰かに告白する。 そんなの、知りたくもなかった。 (だいたい、何で私に相談なんかするかな…) 何だか無性に泣きたくなってくる。 (こんな気持ちになるなんて。…やっぱり、バレンタインなんかいいことない。大嫌いだ…) いくら友人の為とはいえ、チョコを贈るなんて(ガラ)にもないことをするから。 (馬鹿だなぁ。私…) 浮かびそうになる涙を必死にこらえながら。 扉を開こうと手に力を込めた、その時だった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加