バレンタイン・ラプソディ

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「高山…」 突然左肩を掴まれ、後方へと引かれたのと同時にすぐ間近で植草の声が聞こえた。 「え…?」 振り返ると。 すぐ後ろには植草が立っていて、超至近距離で自分を見下ろしていた。 「うえ…くさ…?」 戸惑う自分とは裏腹に。植草は落ち着いた様子で、じっ…と、こちらを見つめている。 「どうし…」 「…たの?」と、続けたいのに。 言葉に詰まって上手くいかない。 (…この状況は、なに…?) 静まり返った校内。教室。 扉を背に、すぐ目の前には植草。 植草は何で私を引きとめたんだろう? 今までの一連の出来事に何か不備でもあったかな? (…っていうか、なんか距離…近い…) 植草の方が目線は高いが、それでも少し見上げる程度の差なので顔がすぐ目の前にある状況だ。 直立したまま動けないながらも、脳内ではパニックを起こしかけていたその時。 植草は僅かに笑みを浮かべると、ゆっくりと口を開いた。 「幼稚園の頃からずっと好きでした。オレと、付き合ってくれませんか?」 (…え…?) その言葉の意味を理解するのに数秒を要し。 硬直し続ける私を、植草はただ静かに待ってくれていた。 「う、そ…」 「嘘じゃないよ」 「だって…わた、し…?幼稚園…?」 「覚えてない?組は違かったけど、高山とオレ同じ幼稚園だったんだよ」 「それ、は…知ってる…。知ってるよ。だって、植草はいつも…私を助けてくれたよね?」 「…覚えててくれたんだな。嬉しいよ」 植草は照れくさそうに頭をかきながら笑顔を見せた。 「あの頃からずっと…お前のことが好きだったんだ。だから、中学で再会できた時はマジ嬉しかった。でも、お前の背を抜くまではっていうオレの意地があって、こんなに遅くなっちゃったんだけど…」 今度は少しだけ苦笑いになる。 (植草も、背のこととか気にしてたんだ…)
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