バレンタイン・ラプソディ

2/15
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「高山先輩、おはようございます!」 「あ、うん。おはよう」 (部活の後輩…じゃないな。知らない子だ) でも、こんなことはよくあることなので普通に笑顔で挨拶を返すと、彼女は頬を赤く染めて立ち止まってしまった。 途端に、後方から聞こえる黄色い声。 「きゃーっ!高山先輩に朝から挨拶を返して貰えるなんてラッキー!」 「いいなぁー」 「やーんっ!真奈…羨ましすぎるーっ!」 うーん…。朝から何だろう、このテンション。 訳が分からない。だって、ただ挨拶返しただけだよ? 私の名前は、高山雪乃(たかやま ゆきの)。現在、高校二年生。 昔から、何故だか私は同性の女子にモテる…らしい。 確かに見た目は女っぽいとは、お世辞でさえも言い難く。どちらかと言えばボーイッシュな(たぐい)に入るのだろうとは思うけれど。 中学時代からバスケ部に所属していて、髪は常に耳出しのショートカット。 そして中学時代に成長期を迎え、伸びに伸びた身長は173センチを超えた。 確かにこれだけ身長があれば、そこらの男子たちとそう変わらない。自分より小さい者も多くいるのが現状だ。 そして、あいにく成長したのは背ばかりで、胸は『気持ち』程度で俗に言う『まな板』状態。確かに女っぽさのカケラもないのは認めよう。 それでも、見た目はどうあれ正真正銘、私は女なのに。 何故、こんな風になるのか自分では理解出来なかった。 「バレンタインが何だって言うんだよ」 「やぁね、モテない男のヒガミはみっともないよ」 「うるせー」 廊下を歩いていると、何処からか聞こえてくるそんな会話。 この時期、校内は来週に控えたバレンタインデーの話題で持ちきりだ。 渡す側の女子は勿論だけど、「バレンタインがなんだ」と言いながらも、そわそわを隠せない男子たちも見ていて分かり易い程だ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!