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昔々とある国の国王様とお妃様の間に1人の男の子が生まれました。
その報せを聞いた国民は大いに喜びましたが、城の中は反対に大変でした。
お妃様の体調が急変し医師たちが大急ぎで治療にあたりました。
なんと、我々魔人にとって大事な魔力がほとんど残っていませんでした。
医師たちの懸命な治療により、お妃様は順調に回復していきましたがまた、新たな問題が浮上しました。
それは若様の魔力がとても強大で異質だったのです。
彼は他の人から魔力を吸い取り、暴走させてしまい何人もの命を奪ってしまいました。
そのせいで誰も若様のお世話をするものがいなくなり、彼は1人ぼっちになってしまいました。
それから数年。王はある男を呼び出しました。
「セバスチャン、アレの世話を頼めるか?」
「勿論。喜んでお引き受けいたします。」
代々魔王様の側近をしている彼は年齢不詳の不老不死。
そんな彼と地下に作られた隔離室に魔王様と向かう。
ここは初代魔王様も強すぎる自分の魔力から国民を守る為に作った部屋で誰も壊すことが出来ない部屋だ。
分厚く頑丈な部屋のドアを開けるとすぐに重い空気が自分に襲いかかった。
部屋の中央に子供が1人横たわっており、我々が入って来たにも関わらず無反応で何の動きも見せなかった。
セバスチャンはそんな子供の元へと歩み寄ると抱き上げた。
「ご出産以来ですね若様。わたくし今日から若様の執事をさせていただきます。セバスチャンです。よろしくお願いいたします。」
「……僕に触らない方がいいよ。」
「何故ですか?」
「おじさんも死んじゃうよ。」
今までにも何人もの命を奪ってしまった若様は、固くその心を閉ざしていた。
冷たく言い放つ若様をセバスチャンは思いっきり抱きしめた。
「!!」
「ふむ、どうやら大丈夫みたいですね。」
「…本当に?」
「はい。」
「…僕、おじさんに触ってもいいの?」
「勿論です。わたくしは若様のモノですから。それとわたくしはおじさんではなくセバスチャンですよ。」
「………セバスチャン…」
そう答えると今度は若様からセバスチャンに抱きついた。
そんな光景を魔王様はただ黙って見ていた。
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