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「若様、サクラは今日学校があると言ったでしょ。」
サクラを抱っこして下におりるとテーブルの上にはお昼ご飯が用意されていた。
「ちゃんと影武者に行かせた。」
「そういう問題じゃないんですよ。」
温かいスープを持ってきたセバスチャンは席についた若様に釘を刺したがどうせ聞かないだろうなと心の中では諦めていた。
「はいはい。」
案の定若様は空返事をするだけで実際にはあまり聞いていなかった。
震える手でパンを持つサクラに若様が嬉しそうに自分がちぎったパンを食べさせる。
「美味いかサクラ?」
「美味しいです。」
まるで昔の光景を見ているようだ。
『ほらサクラ。あーん。』
『あー…』
おやつを若様から食べさせてもらうサクラはパクリと指ごと食べた。
『セ、セバスチャン…可愛すぎて死ぬ』
『そんな簡単に死にませんよ。』
ヨダレでべたべたになるが、無理に離さずサクラにされるがままの若様にセバスチャンが苦笑した。
『これが萌えというやつか。』
『どこでそんな言葉を覚えてきたのですか。』
そんなやりとりがつい最近のように思えたがあれから15年が経ち彼らも成長した。
ある日を境に若様とサクラの関係は家族から恋人へと変わり若様のスキンシップは目に見えるほど激しくなった。
夕方になると痛みとダルさはまだ完全に抜けていないが自分で動けるまでに回復したサクラはセバスチャンと夕飯の支度にとりかかった。
コンコンと小さな窓を紙で作られた鳩が叩く。
窓を開けセバスチャンがその鳩を掴んだ。
1人リビングで寛ぐ若様宛ものだ。
若様本人に手紙が渡れば、彼は確認もせずに燃やす為セバスチャンに届く事になっている。
いつもの若様の任務の手紙かと思い中を確認するとどうやら今回は違ったようで何やら若様にとってはあまり乗り気ではない内容が書かれていた。
「大丈夫ですか?」
いつもと違った様子のセバスチャンにサクラは心配そうに尋ねれば、大丈夫ですよと優しく微笑み料理を再開した。
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