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朝、いつもの温もりを感じられず何の邪魔もなく制服に着替える。
下に降りても若様の姿が見当たらずセバスチャンしか居なかった。
「おはようございますサクラ。」
「…おはようございますセバスチャン。」
「さあ、ご飯を食べましょう。今日はちゃんと学校に行くんですよ。」
「あの、若様は…?」
「若様なら少し散歩に出かけてますよ。」
避けられている。
そう感じたサクラはまた泣きそうになったが、歯をくいしばって泣くのを堪え用意された朝食を食べた。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。気をつけて。」
学校に行く時間になっても若様は戻らずセバスチャンに見送られ登校する。
トボトボと歩いていればサクラと名を呼ばれ振り向くと友達のエリーが走って来た。
「おはようサクラ!」
「おはようエリー。」
彼女はサクラの親友のエリー。
成績優秀、スポーツ万能、そして頼れる姉御肌のエリーは周囲からの信頼も厚くクラス委員長をしている。
「どうしたの?後ろ姿元気なかったけど。」
「ちょっと、家族と喧嘩して…」
「あらサクラが喧嘩するなんて珍しい。」
若様に関する事は全てがトップシークレット。
誰にも自分と若様に関わりがあるのを知られてはいけないのだ。
例えばエリーがサクラの親友でも。
別に喧嘩をしたわけではなかったが何と説明すればいいのか分からず、取り敢えず近い言葉でエリーに話した。
「……ねぇ、エリー。エリーが弟と喧嘩して何十年も会ってなくて、でも相手から会いたいってきたらどうする?」
「実際になったらまた違う答えになるかもしれないけど、私は会いたいわ。会って一回ビンタしてそして抱きしめる。」
「ふふ、エリーらしいね。」
「ちょっとはスッキリした?」
「うん。ありがとう。」
「どういたしまして。」
それから一緒に教室まで向かい自分たちの席に着く。
窓側の席のサクラは朝礼が終わり授業が始まっても暫く外の景色をただ眺めていた。
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