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サクラが家を出て暫くすると若様も戻ってきた。
「サクラなら学校へ行きましたよ。」
コーヒーを飲んでいたセバスチャンに分かっているとだけ返事してお気に入りのソファーに深く腰掛けた。
サクラは優しいから、あんな事を言った。
決してそんな事を思っているはずが無い。
自分にとっての家族は奴等ではなくここにいるセバスチャンとサクラだけなんだ。
だけどサクラに血の繋がりを言われた時、もしサクラの本当の家族が現れればお前は俺を置いてその家族の元へと行ってしまうのかと不安になった。
「サクラ朝若様が居なくて寂しそうでしたよ。」
「…そんなの、俺だって…」
寂しいに決まっている。
「若様、わたくしからも言わせていただきますが、貴方は弟君様に会いたいと少しでも思っておられますか?」
「……全くないと言うわけではない。ただ、今更会ってどうしろと言うのだ?」
「どうもしませんよ。貴方の思う通りにしたらよろしいではないですか。」
「無責任だな。」
「もう25なんですからそれくらい自分で責任をとりなさい。」
「…もう少し考えさせてくれ。」
「ええ、後悔しないように時間をかけてたっぷり考えて下さい。それともう一つ。」
「なんだ。」
「わたくしとサクラはいつでも、どんな時でも貴方の味方ですからね。」
コーヒーを飲み終えたセバスチャンは自室に戻りリビングには若様1人になった。
昼が過ぎ時刻は夕方に近づき辺りはオレンジ色に染まり出す。
ゆっくりとソファーから立ち上がりセバスチャンにサクラを迎えに行くと告げ、姿を犬に変えた。
「あれサクラまだ居たの?珍しい。」
「ユージ。」
何となく家に帰りたくなかった。
エリーは今日帰ってから家族と旅行だと言っていたし、他に頼れる場所がないサクラは教室に残り、何をするわけでもなくただ自分の席に座っていた。
部活を終え忘れ物をしたのか、1人残って居た教室にエリーの幼馴染みのユージが入ってきた。
「そろそろ門が閉まるぞ。」
「あ、うん。」
自分の鞄をもち、ユージの後をついて行くように教室を出た。
「エリーと喧嘩…した訳じゃなさそうだよな。朝から仲良く喋ってたしな。」
「ちょっと、帰りづらくて…」
帰っても若様に避けられると思うと中々家に行きたいと思えなかった。
「家の人と喧嘩した?」
「うん、まあ…」
ユージと一緒に門までの道のりを歩く。
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