第4章 正直な話

4/4
前へ
/25ページ
次へ
間野さんは手を伸ばすと、私の涙をその指で、拭ってくれた。 「けど、ごめんな。今の斎藤が言ってくれた言葉。聞かなかった事にしてくれないか?」 ー 好きなんです、先輩の事が。ー あの言葉を? 聞かなかった事に? 「そんな!」 私は間野さんに、寄りかかった。 「お前は、酔ってるんだよ。」 頭が空っぽになって、腕に力が無くなった。 「俺、ここから歩いて帰るな。お休み、斎藤。」 そう言って間野さんは、私の腕を優しく外すと、クルっと背中を向けて、離れて行ってしまった。 何回泣けば、気が済むんだろう。 何回傷つけば? 何回辛くなれば? 私の精一杯の告白を、断るどころか、受け取ってもくれなかった間野さんを。 私は諦める事も、忘れる事もできない。 そんな私は、だんだん小さくなって行く、間野さんの背中を、見続けるしかなかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加