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「あぁ、松野くんおかえり。待ってたよ」
帰ってきた俺にそういうのはここの管理人である青年。優しげな笑みを浮かべているが目の下にはクマがある。
「ただいまです、どうしたんですか?」
「みんなー、松野くんが帰ってきたよー!」
管理人は俺の質問に答えずに声を張り上げた。
一斉に一階のドアが開くと同時に甘い匂いがし、皆ダンボール箱を持ってふらふらと俺に近付いてくる。
よく見たら皆クマができている。
「あ、あの……これは……?」
恐る恐る聞いてみる。
「君の婚約者からだよ……」
「千鶴って言ったか?13日から毎日毎日ダンボール箱何箱分ものチョコ持ってきてよぉ……」
「去年のバレンタインに怒らせたから今年は頑張ったんですって。その間あなたどこに行ってたの?」
住人は口々に言う。
「君の部屋の鍵を開けて入れようと思ったんだけど流石に悪いと思ってね、皆で預かる事にしたんだよ」
管理人は笑顔で言うけどなんだか痛々しい……。
「あ、すいません……とんだご迷惑をおかけしました。……元カノのストーカーが」
俺は皆に深々と頭を下げた。
「元カノだかストーカーだか知らないがはやく部屋を開けてくれ」
「は、はい……」
俺は2階にある部屋へ行き、鍵を開けると皆からダンボール箱を受け取っては室内にいれるという作業を繰り返した。
ダンボール箱をすべて受け取ると、俺は数を数えてコンビニへ向かった。
「いらっしゃいませー」
店に入ればやる気のなさそうなおっさんが力なく言う。
俺はそのおっさんが突っ立ってるレジへ行った。
「すいません、着払いの用紙を15枚ください」
「少々お待ちください」
おっさんはしゃがんでガサゴソし始める。特大バーコードが見えた。
「どうぞ」
おっさんは着払い用紙の束を俺にくれた。明らかに15枚以上ある気がする。
「どうも」
俺はありがたく受け取って家に帰った。
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