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2月12日、俺は引越しをした。
2月13日、俺は池袋に来ていた。そして今の俺は……。
「そこの自宅警備員さん、一緒に写真撮ってください!」
ややぽちゃっとしたメガネの女の子に言われ、隣で銃を構えてみせる。メガネの子と一緒に来ていると思われる子が一眼レフで何枚か撮った。
「ありがとうございます!」
メガネの子は目をキラキラさせてお礼を言ってくれる。
「いえいえ」
俺は今、池袋のコスプレイベントに参加している。すべてはメンヘラ女、千鶴から逃げ出すため……。
顔も隠れる自宅警備員のコスプレをして会場をウロウロする事3時間、そろそろ切り上げるか。
「あのー……」
声をかけられて振り向き、俺はギョッとした。
声をかけてきたのは赤いリボンで結ったツインテールに、ゴスロリとパンク系を足して2で割ったような服装の女の子だった。
服の系統や髪型が千鶴と似ていたため、俺は冷や汗を流した。
「な、なにかな?」
「一緒に写真撮ってください!」
あ、だよな……。今俺コスプレしてんだもんな。何キョドってんだ俺……。
「いいよ」
スマホの内カメラでツーショットを撮ってその子と別れると、俺は急いで着替えて会場から出た。
いくら俺がオタクを軽蔑していてコスプレが盲点だとしても、千鶴がいつ来るか分かったものじゃない。
コインロッカーに自宅警備員の衣装を押し込み、あらかじめ閉まっておいた他の服やらメイク道具を引っ張り出す。
男子トイレに駆け込み、フリフリのロリータを着てウィッグを被りメイクをすればちょっと体格のいい原宿女子完成。
俺はそのまま原宿へ行った。
電車に乗れば周りの視線が痛い……。
なんとか突き刺さる様な視線に耐えて原宿へ到着。俺と似たようなのもいればそれ以上にヤバいやつもいて少し安心する。
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