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しばらく原宿を歩いてみると意外と楽しい。いや、別に女装癖に目覚めたりした訳では無い。
ふと時計を見ると夕方5時過ぎ。俺はコンビニでパンと飲み物を買い、近くにある友人の家へ行った。
インターホンを鳴らすと友人の英孝はすぐに出てきてくれた。
「おっと、マジで女装してんのな」
英孝は面白がるように俺を見る。
「いいからはやくあげてくれ、時間が無いんだ」
「はいよ」
俺は上がり込むとスマホを充電させ、数日前に郵送で送っておいた服に着替えた。
「あー、さっきまで可愛い女の子だったのに脱いだらトランクスとかマジ萎える……」
英孝は心底がっかりした様子だ。そんな英孝を無視して服と一緒に送っておいた鞄に財布と、先程コンビニで買ったものを詰めた。
これらの作業を終わらせるのに10分ちょい。充電は正直あまり期待できない。
「優馬、これ持ってけ」
英孝が俺に渡してくれたのはモバイルバッテリー。
「いいのか?」
「これが終わったらちゃんと返せよ?」
「サンキュな」
俺は英孝に感謝しながら新宿のバスターミナルへ行った。
俺は深夜バスに乗り、東京から京都へ。バス内では睡眠薬で無理やり眠った。
早朝、京都に到着。体のあちこちが痛い……。
喫茶店で軽食を済ませると漫画喫茶へ向かった。
とてもじゃないが観光を楽しむ余裕なんてない。俺は漫画喫茶で数時間ほど寝た。流石に夜行バスじゃあんまり寝れなかった。ついでに充電もしておく。
起きたのは昼過ぎで、腹が減った。漫画喫茶を出てどこか飲食店がないかと探し回る。
「あの……」
後ろから声をかけられてドキリとする。まさか千鶴のやつ、京都まで追いかけてきたとか……?
恐る恐る振り返ると見知らぬ二十歳前後の女性がいる。ひと目でわかる、こいつメンヘラだ……。
「なんですか?」
彼女はモジモジしながら口を開く。
「あの、ひと目見て運命感じてしまって!良かったらこれ、食べてください。あと、それと……付き合ってください」
あーなんか運命とか訳の分からない事を言われた。しかもなに、チョコ?今日バレンタインだもんなー、はははっ…… 。
俺は彼女からチョコを受け取ると、地面に思いっきり叩きつけた。
「俺運命とか信じないしそんなの無いし君気持ち悪いので付き合えません無理です」
早口で言うと、俺は死ぬ気で走って逃げた。
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