序章

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「ねえ、昨日弓華(ゆみか)が自殺したよ? 病室の強化ガラスをぶち破ったんだって」 「聞いたわ。機械が顔にまで及んだからね。綺麗な顔してたから、凄いショックを受けてたわ。また奴らがガラスを厚くするわね。窓埋めちゃうかも? 嫌だな」 「丁羽(てう)は平気なの?」 「何が? 弓華が死んだ事? 顔の機械の事?」 「両方だよ」 「そうね。弓華の方はもう慣れた。もう何人も死んだし。悲しいのに慣れた。顔の方はなんとも思って無いわ。むしろ気に入ってるわ」 「どうして?」 「ーー? なんで気に入ってるかって事?」 「うん」 「鏡を見る度に、いつか心も機械になるんだな。って思うからよ。そうなれば、何も辛く無い」 「心は機械にならないよ。物理的なモノじゃ無いもの」 「ーー嫌な事を言うのね? 脳まで機械になれば分からないじゃない。まだ脳までなった奴居ないし」 丁羽はムッとして、無為(むい)を睨む。 「嫌なの?」 「嫌よ。ずっと、辛いじゃない」 「そうだけど、嫌かなーー?」 「嫌よ」 丁羽は半分機械になった自分の手を見つめ言う。
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