プロローグ 侵略者の想い

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「本艦下部に被弾!マキシマエンジン出力低下!」 「不明船弐、粒子砲を発射!前方のレッドサタンに直撃!レッドサタン轟沈!レッドサタン轟沈っ!!」 (これは…やばいなぁ…。)  地球防衛軍、神宮寺 喜八郎(じんぐうじ きはちろう)中将は硬い艦長席に腰掛けながら、ぼそりと呟いた。  ーーーー  凡そ十数分前に遡る。  喜八郎は憂鬱であった。  折角六十五歳の誕生日を迎え、あと半年で退役となる筈であったのに、軍上層部の命令で、海王星付近で感知された重力異常の調査に赴く事になったのだ。  苦手な亜光速(ゼロドライブ)航法で船酔いにもなり、目眩に耐えながら目標地点に辿り着けば…。 「っ!?前方に重力震反応!何か…何か来ます!」  喜八郎は目を見開いた。 「う、宇宙が!?割れ…!?」 「何だ…あれ!?クリスタルの…船?いや、城か!?」  宙を割って、比喩では無い、文字通り空間を硝子の様に割って巨大な二体の構造体に遭遇したのだ。  それは、綺麗な城であった。  白亜の結晶のような物資で構成された巨大な城体が暗黒の宇宙に浮かぶ様は優美なものであると喜八郎は感じせざるを得なかった。 【地球ノ皆サマ。】  突如、スピーカーから響く凛と澄んだ小女の声が喜八郎達の鼓膜を叩く。     
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