コンビニは何でもセルフにしていくべきですか?

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 光太郎だって、コンビニのキャンペーンの企画何て自分から申し出てやっているのではない。 支店の視察に来た本部の社員が、たまたま光太郎に声を掛けてきたのだ。  光太郎が店長を務めるコンビニは、人によってはなかなかおしゃれと思う人もいるだろう。広いカフェスペースには、光太郎が趣味で作った割合大きなアクアリウムが飾られていた。 清隆に言わせれば、窓辺に海藻が光る大きなガラスの水桶があるというのはいっそシュールで恐ろしい。 しかし、光太郎は年がら年中涼しげでいいじゃないかと、撤去するつもりは毛頭なく、浅黒く太い腕を振るって毎日手入れをしていた。  店では、生体の観賞魚も扱っていて、立派な水槽の中でいつも気持ちよさそうに泳いでいる。  店のディスプレイは、手書きのものも含めて手先の器用な清隆が作ってくれており、カフェスペースの前には、店でよく売れている商品を週替わりでランキング掲示されていた。  最近では、近所の主婦の方々が、趣味で料理サイトに上げているレシピをプリントアウトして、店に飾ったりしていた。地方の地域密着型の店舗なので、赤字にならないようにそれなりに工夫しているのだ。  それを見た視察の社員はなかなか面白いと思ったに違いない。しかし、それらはほとんど客から出たアイディアで、光太郎が自ら思いついたのは、趣味のアクアリウムだけなのだ。 「俺だって、面倒くさいことはやりたくない」 拒絶する清隆に、光太郎は持っていたパソコンのマウスを押し付けた。すっかり、やる気がなくなっていた。 「やらないなら、もうこの場所は使わせないぞ」  光太郎の科白に、清隆の顔が情けなく歪んだ。光太郎は、コンビニのカフェスペースを清隆が家庭教師をやる場所として提供していた。清隆は、コンビニを使えば生徒の家に行く分の交通費が浮き、場合によっては2人とか3人とか同時に教えることも可能なので、その分安く授業を提供しているのだ。 おまけに、清隆は光太郎がこのコンビニが入っているアパートの管理人をしている関係で、アパートの管理人とコンビニ裏の畑を世話するアルバイトをやっていた。もちろん、住まいもこのコンビニの上である。  
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