9 結婚式とアカチャンと

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熊野(いや、気働きは奥さんのほうか)が、子連れの2人のために部屋をとってくれていたので、都内ではあったが、秋人達はホテルに1泊して帰ることにした。 今3人は、穏やかな夕暮れの中、ホテルの庭園をノンビリ散歩している。 さっきまでむずがっていた赤ん坊は、燈子の胸の中でようやく眠ったようだ。 秋人がスリングを受けとると、燈子はフウッと一息をつき、トントンと右肩を叩いている。 スリングの中、ふてぶてしい顔つきで眠っている赤ん坊の顔を、秋人はある種、複雑な思いで眺めていた。 ったく。 燈子をはじめ女どもは、コイツのことを『笑った』とか『可愛い』とか騒いでいるが…… コイツ、俺には1度もそんな顔を見せたことがない。 小さな赤い唇に“チュッ”と軽く口付けると、ものすごく嫌そうに顔をしかめる。 フン、ざまあみろ。 テメエの初チュー、俺が奪ってやったぜ。 それを愛情表現だと勘違いしたのか、見ていた燈子が嬉しそうに笑った。 「ヘヘ…何だか秋人サンは…変わりましたね」 「何が?」 「そういうの、“格好悪いから” って、絶対やらないヒトかと思ってました。 結構サマになってますよ?」   「な……」 何だか照れ臭い。からかうように見上げた顔に、平静を装って言い返した。 「当たり前。デキる男は何をやってもキマるんだ」 「あー、…ハイハイ。 あ、見てみて!キレイなお花。 何ですかね、アレ」
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