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燈子の意識は、不毛な会話から庭園の花に移っていく。
嬉しそうに燥いでいる彼女の横顔に向かって、秋人はふっと微笑んだ。
___俺が変わったんだとしたら、それは多分君のせいだ。
思うに。
これまで俺達は、どこか不完全なパートナーだった。
俺の浮わついた愛情はいつも君を動揺させ、その君の動揺が、俺を不安にさせていた。
だから俺達は、肌に触れあうことで、絶えず互いの愛情の有りかを確かめておく必要があったんだ。
けれど、今は違う。
適度な距離が心地よい。
目には見えない、確かな信頼がそこにあるからなんだろう。
彼女がまず、自身の動揺を絶ち切った。
俺はただ追随しただけ。
情けないことに、5つも年下の君に助けられてばかりいる。
これからは、
周りをも巻き込み焼き焦がしてしまうような炎の波に2人して浮き沈みする、激しく不安定な恋の時期には終わりを告げて
それは自然と
初夏の夕暮れの木漏れ日のように静かな、しかし心地よい愛情に変わっていくのかも知れない。
少し、寂しい気もするけどな___
と、エエ格好しいの俺様としては、ここで終わっておきたいトコロなんだが…
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