9 結婚式とアカチャンと

6/8
658人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
燈子の意識は、不毛な会話から庭園の花に移っていく。 嬉しそうに燥いでいる彼女の横顔に向かって、秋人はふっと微笑んだ。 ___俺が変わったんだとしたら、それは多分君のせいだ。 思うに。 これまで俺達は、どこか不完全なパートナーだった。 俺の浮わついた愛情はいつも君を動揺させ、その君の動揺が、俺を不安にさせていた。 だから俺達は、肌に触れあうことで、絶えず互いの愛情の有りかを確かめておく必要があったんだ。   けれど、今は違う。 適度な距離が心地よい。 目には見えない、確かな信頼がそこにあるからなんだろう。 彼女がまず、自身の動揺を絶ち切った。 俺はただ追随しただけ。 情けないことに、5つも年下の君に助けられてばかりいる。 これからは、  周りをも巻き込み焼き焦がしてしまうような炎の波に2人して浮き沈みする、激しく不安定な恋の時期には終わりを告げて それは自然と 初夏の夕暮れの木漏れ日のように静かな、しかし心地よい愛情に変わっていくのかも知れない。 少し、寂しい気もするけどな___ と、エエ格好しいの俺様としては、ここで終わっておきたいトコロなんだが…
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!