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「もうヤダなー、恥ずかしいったら…」
「ちゃんと連絡入れといただろ?」
赤くした顔を掌で覆う燈子の額を、軽く小突く。
「ごめん、寝てた」
ニヒャッと笑う彼女の仕草があまりに可愛いかったので、抱き締めようとしたところ、熊野にギロリと睨まれた。
熊野はしばらくの間、青ざめた様子で、“ついていけない” などとのたまっていたが、
ようやく我に返ったようだ。
「や。久しぶりだね、トーコちゃん」
「はい、熊野さん。
そうだ!ちょっと準備してきますね」
またしてもダッシュしようとする燈子を、俺は慌てて引き止めた。
「走るなって!そんなことは俺がやるから。オマエはそう、コイツの相手でもしてなさい。
……嫌だろうけど」
「イチイチ腹立つよな~、オマエ」
憮然とする熊野を置いて、俺はキッチンへと向かった。
飲み物の準備をしている間、リビングからふたりの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
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