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もちろん、本人の努力もあるけれど、天は二物を与えずということわざを見事に覆している。まさに少女漫画から抜け出てきたようなハイスペック男子。そんな男子高校生が弟なのだ。冗談で、「王子」と呼んだら、照れくさそうに「やめてよ」と言われた。気取らない性格も潤也のいいところだ。
「ご飯できているよ」
「おー、サンキュ……って、お前が作ったのか?」
「ほかに誰がいるのさ」
潤也は手際よく鍋をかき回しながら言った。辺りにカレーの香ばしい匂いが立ち込める。
「今日の夕食当番は俺だろ」
「そうだけどさ。いっちゃん、忙しいでしょ。食事の準備くらい、オレにさせてよ」
潤也は文句を言うでもなく、にっこりと笑ってみせた。
できた弟を持ったものだなあと嬉しくなる反面、自分が兄なのだからもっとしっかりせねばと思う。
「わかった。じゃあ、盛り付けは俺がするから、着替えてこいよ」
「うん。冷蔵庫にサラダがあるから」
二人はバトンタッチして、今度は郁がキッチンに立つ。カレー皿に炊きたての白米とカレーを盛り、ダイニングテーブルにのせる。
潤也に言われたとおり、冷蔵庫を開けると、彩り豊かなサラダがあった。ちぎったレタスの上に、千切りにしたキャベツ、ニンジン、大根、缶詰のコーンにミニトマトがのっている。
「手、込んでいるな、あいつ」
カレーといったらカレーしか用意しない郁は、サラダという付け合せがあるだけで感心してしまった。
しばらくして、着替えを終えた潤也が現われた。
向かい合って、席に座る。
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