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私は二人に尋ねた。
「まさか! ノハンが嫌いなイジャなんていないでしょう。時たまひがみ根性の強いやつがああいう嫌がらせをするんですよ」
イジャの人が答えた。ノハンの彼は黙っている。
「君もそう思うかい?」
私が訊くと、二人とも驚いたように目を見開いてこちらを見る。何かまずいことを言ったか、と冷や汗をかいていると、彼が答えた。
「……イジャとノハンは、まったく違う人間ですから」
イジャの人が降りて行って、青年と二人になったところで、ノハンの村まで案内を頼んだ。彼は、「外国の人がノハンの村まで訪ねてくるなんて」と驚いた。
「ふつうは街中で宿をとって、ノハンの村のようなへんぴなところにまでやってくる旅人はいませんよ」
「迷惑だったかな?」
「まさか! 珍しいことなので、村長も喜ぶと思います。部屋を用意しますから、きっと泊まっていってください」
まだ二十歳前後くらいに見える端正なその青年は、名前をセイといった。
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