バッドサイエンティスト

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好まぬイベントが近づく時ほど、時間が過ぎるのは早い。 気づけばもう放課後を迎えようとしていた。 思えば今日一日、クラスメートはみな浮足立っていた。 まるでクラスの中が熱に浮かされたかのように。 放課後前のHRになると、それは最高潮に達しようしていた。 すでに事無した者、これから戦地に向かおうとする者、 そして、来るかもわからぬ相手を待ち構える者。 それぞれの状態は違うだろうが、 少なからずみな、今日という日を謳歌しようと必死だった。 それもそのはず。 残り少ない高校生活で、バレンタインは特別な恋愛イベントだ。 これを逃すとあとは卒業式くらいしかないが、 卒業式は色恋沙汰のためのイベントではない。 青臭い春を感じられる最後のチャンスをと言っても過言ではないだろう。 もちろん、まだ受験の終わっていないクラスメートもいるのだが、 そんなことはお構いなし。 誰しもがその空気に酔いしれていた。 ーーそして、俺にはそれが羨ましかった。
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