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恐らく、この尊大な顔つきのせいで、
恋愛成就の願掛けにでもされてるいるんだろう。
女子たちにとって俺にチョコを送るということが、
何らかのステータスになっているに違いない。
というのが俺の導き出した結論だ。
貰えるならまだいいじゃないか、と思うかもしれない。
しかし、丸裸のチョコを押し付けられた靴は
抹茶色に染まり、ベトベトとした履き心地には非常に不快、
そして何より、チョコをいっぱいに詰め込まれた下駄箱という光景は
嫌悪の対象でしかない。
ーーこんなバレンタインデーなら正直なくなって欲しい。
再び俺の心に暗黒の波濤が押し寄せる。
「高校最後の年くらい、まともなバレンタインデーを送りたい……。」
1年、2年と散々な扱いを受けた俺の口から思わず心情が漏れる。
ふと、誰かに聞かれていないかと周りを見渡すも、
みな下校してしまったらしく、人影は俺一人だけだった。
ーーいくら悩んでも仕方ない。
ふう、とため息を付いたあと、
俺は下駄箱の最下段の扉を開ける。
高校3年間で大きくなった体に
最下段の下駄箱は億劫だな、と思いながら靴を取り出す。
すると、靴底には何か小さな物が入っているのに気付いた。
手にとって見ると、それは一粒のチョコだった。
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