スレンダーガイ

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「よっ!あったか、康介?」 背後からかけられた突然の声に驚いた俺は すぐさまそのチョコを口に放り込んで胃に流し込む。 誰かに見られて誂われるのは性に合わない。 振り返るとそこには、同じ陸上部の隆一が立っていた。 「あったか、って何が?」 俺はとぼけたように隆一に聞き返した。 「わかってるくせにー。 今日はバレンタインだろ。」 人の気も知らない隆一の言葉に、俺は自嘲気味に言った。 「ねーよ。だいたい、告白なら校舎裏にでも呼び出せっての。」 立ち上がった俺は、隆一に目線を合わせてると、 改めてイケメンとはこういうものか、と思わざるをえない。 それは三枚目の俺とは違う、すっと鼻筋の通った端正な顔立ち。 顔だけでなく贅肉を落としきった体。 長い足から生み出される広いストライドは、 まさに中・長距離の為に産まれてきたと言っても過言ではない。 そして成績はと言うと学年トップクラス。 ーーああ、天はどうして彼に二物、いや多物を与えたのか。 もちとん、そんな彼にとって、バレンタインはポジティブイベントに違いない。 故に、我々一般庶民の劣等感など伺い知ることもないのだ。 だから俺は、下駄箱のチョコのことを隆一には相談したことがなかった。
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