第1章 生まれてはならない子供

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そんな冷酷非情な連中の目的と言えば、 神様への貢ぎ物、 つまりは生贄を差し出して百年の平和を手に入れることだという。 この地にはかつて神だったはずの化け物が、 百年に一度生きた人間を喰らうという伝説があるらしい。 村人たちは自分の身内から生贄を差し出すことを嫌い、 よそ者である俺を親類から買い取って三年前に連れて来られた。 俺を売った親類は人間じゃない。 俺を化け物の餌にするとわかっていて差し出すのだから、 最早人間じゃない。 ここの連中の誰一人を取っても、人間らしい道徳観念を持つ賢人はいない。 人々がなぜそうまでして化け物と化した神に縋りつくのか。 それは侵略戦争のせいだし、天災が続き食糧難が起きて、 明日生きているのかさえも脅かされているからに他ならない。 けれどそんな理由が、俺をここに留めているわけじゃない。 俺は、自分を迎えに来る死を待っている。 ただ野垂死にするよりも、 どうせなら誰かの役に立つ死に様を選ぼうと思った、それだけだ。 屈強そうな村の衆に抑えつけられて、 腕の自由を奪われて綱に引かれてやってきたのは 奴らの記憶に俺を刻む為だ。 百年に一度の祭事っていうなら、 こいつら全員、次はもう必ずくたばっている。 次の百年後に選ばれる知らない生贄の為に、 俺は消極的な抵抗をして奴らの心に罪悪感を滲み込ませたかった。
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