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詩集の間に挟まれた一通の手紙、桜色の便せんからはいつものまゆさんの匂いがした。
──── 彩へ、泣いてなんかないよ、私は
まゆの涙は泣かない涙 そう言ったのは彩香たちじゃない
幸せをつかむまで、もう私は泣かない
一晩中泣きぬれたあの夜にあなた達の前で誓ったのは嘘じゃない
そう、私は東京に負けたわけじゃないんだ
美音、雪、彩香、美穂、志津香
そのことを教えてくれたのはあなた達
私はすこし生き急いでいただけなんだよね
私の夢 私の笑顔 それはちょっとの間、みんなに預けておくよ
私が何処にいようと、あなた達が何処で歌っていようと
その詩集があなた達の手元にある限り
きっと私は戻って来れる
今は笑うことさえ忘れてしまった私だけれど
いつか きっと笑って見せる、あなた達のまえで
急ぎすぎたときはもう振り返らない
だから自分の脚でしっかりと歩むことを私は選ぶ
もうわたしには翼はいらないんだよ、さやか
まゆ
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