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「…っうぅ、ぐずっ、~~っ、」
私は、「愛」というものに好かれていないみたいだ 。
「 っあ、……もう!いったい 、」
今日はあいにく、天候にも好かれなかったらしい。
脱げてしまったハイヒールを拾って、ただただ降り注ぐ雨の中。
さっき見た光景もいっそのこと一緒に流してよ、なんて。
いつか読んだ少女マンガの主人公のようなことを考える。
カバンの中で何度も震えるスマホ。
きっと彼からの弁解の電話とLINEだろう 。
ごめんなさい。今は出る気にならないの。
でも大丈夫。
…明日になれば、きれいさっぱり忘れてるんだから。
悔しかった。
こんな時に、自分の障害をありがたい、と思ってしまうなんて。
でも、1週間前の自分を殴りたい。
“日記”なんてものをつけはじめてしまっていたらしい過去の私。
1週間前に起こったことまで、鮮明に書いてあるんだから。
これが初めてじゃなかったんだ。
はやく家に帰って、その日記を捨てよう。
ほら、そうすれば、今日のことも、1週間前のことも、日記のことも、
…彼のことも。
忘れることができるんだよ。
なのにそれができない私は、
きっと臆病なんだ。
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